大学入試 解答の原則公表をルール化について思うこと

2021年9月16日

ブックスドリーム 代表の井上と申します。

いつも弊社サイトをご覧頂きありがとうございます。

今回は巷で話題になった「大学入試 解答の原則公表をルール化」について思うことを書いてみたいと思います。


この問題、元々は阪大の物理の問題の出題ミスを吉田弘幸先生らが指摘していたものを大学側が「元の解答が正しい」ものとしてそのままにしてしまったことに始まります。吉田弘幸先生はSEG講師として有名な先生で今は河合塾でも教えていらっしゃいます。

以下に発覚の背景と吉田先生のツイートがまとめられています。

大阪大学大学入試の物理の出題ミス発覚の背景(1年間)

発見者が恩師で、去年から問題解決のために尽力されていたことを思い出したので、その背景を。 SEG と K塾は、塾・予備校の名前です。 大学範囲の物理学までしっかり教えている先生で、教え子には物理学者も科学者も多数います。 続きを読む 2018年1月6日(土) 大阪大学 …

吉田先生についてはこちらで詳しく紹介されています。

京大と大阪大の出題ミスを見抜いた予備校講師、その人物像

「京大の出題ミスに気づいたのは1年以上経ってからでした。今さら指摘しても、学生たちの人生を大きく変えるし、騒動にもなるので、大学への連絡を躊躇しました。でも、見て見ぬフリはできなくて…」  そう葛藤を語るのは、予備校講師の吉田弘幸先生(54才)だ。 …

SEG出版から著作が有り、「SEGハイレベル物理シリーズ」が著名です。

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今回の件、吉田先生も指摘されているとおり問題の誤りを指摘された際の阪大の対応も良くなかったようです。

そしてその後に京大でも同じく物理で出題ミスが発覚しました。

【京都大入試】出題ミス(物理)の問題とは?正しい解答や解説は?

このような経緯で文部科学省が大学入試問題の解答の原則公表をルール化したということです(従わなくても罰則はありません)。

大学入試問題、解答を原則公表に 文科省新ルール

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これを受けて思ったことは「記述問題の解答はどうなるのだろう」ということでした。解答が一意に定まるものは良いとして、記述問題は解答が一つに定まらないものが多くあります。

極端な例を挙げれば京大の英語と国語の問題はほとんど全て記述問題で字数制限もありません。そして模範解答例も公表していません。

一例ではありますが、これってどういう意図だろう?と考えてしまうのです。

私個人の経験で言えば、大学の教授は模範解答として想定している解答を受験生がそのまま解答してくることは基本的に想定していないと思うのです。解答が大切と言うよりは見たいのはその解答に至るまでのプロセスで有り、「思考力・判断力・表現力」だと考えています。

採点も一人の教授が行うのではなく、何人もの教授が行い、その年の受験生の解答全体のレベルと結果としての各問題の難易度も考慮しながら差が付くように採点していく、数学では計算用紙まで採点することもあったと聞いたことがあります(今は行われていないとも聞いています)。

また、英作文の問題などは模範解答例は示せたとしても、どこまでネイティブとの差を許容するか、文法的に正しければOKなのか、冗長な表現になっても伝わればOKなのか、などなど実際の採点には様々な問題があります。解釈においても同様に、時に予備校の模範解答の解釈が割れたり、教師の解釈も割れることがあります。

これらに対していわゆる「模範解答」を示すことが一定の指針なり枠を与えすぎることになり受験勉強のための勉強を助長しかねないと思うのです。また、問題の設定の仕方や模範解答によっては大学が示した解答への疑義や解釈の相違、採点上の疑問も噴出するでしょう。

このように、記述問題に関しては解答を公表したことが問題を呼んでしまうこともあり得ると思います。しかし、本来大学が見たいのは「解答」という結果ではなく、そこに至るプロセスと「思考力・判断力・表現力」なのです。(もちろん結果が大切な問題もありますが。)


このような思いを心の片隅に抱えていたところ以下の記事で同じようなことを指摘されていました。

大学入試の解答原則公開は何をもたらすか(土居丈朗) – 個人 – Yahoo!ニュース

文部科学省が6月5日に、2019年度入学生の試験から、大学入試の解答を原則として公開するよう各大学に求めた。正式には、 「平成31年度大学入学者選抜実施要項」(PDFファイル) にて国公私立各大学等に通知した。 …

また、東大と京大はこれまで通り解答は非公表とする方針のようです。

大学入試問題&解答の公表を文科省がルール化 でも、東大・京大は拒否しています。 – 蒼き空に笑う

大学入試の受験勉強の定番は、過去に出題された問題を集めた「赤本」をやることです。 恥ずかしながら初めて知ったのですが、ほとんどの大学が問題は公表していても、解答は公表していなかったのですね。「赤本」の解答は、出版社が独自で作成したものだったのです。 ここ何年か、出題ミスが続いたことから、文部科学省は入試問題と解答の公表を原則として求める新ルールをまとめました。 …

ただし、同時に出題ミスや採点ミスがあった場合、受験生のその後の人生に関わるミスにもなりかねませんから、このようなことが起こらないチェック体制を構築していくこと、解答が一つに定まる問題に関しては解答を公表することが大切になってくるように思います。

出題ミスが最初に発覚した阪大でもこのような方針で今後は対応するようです。(著作権法の問題もあり「英語」や「国語」の問題と解答は掲載されていません。また阪大は以前から模範解答の「閲覧」は可能でした。)

阪大、解答例をホームページで公開へ 入試ミス受け

大阪大は20日、昨年2月の入試でミスがあり、本来合格だった30人が入学できなかった問題を受け、試験問題や解答例、出題の意図を大学のホームページで公表するなどの再発防止策を発表した。外部からの情報提供の機会を増やし、ミスの早期発見につなげるねらいがある。今月25、26日に実施する一般入試から導入する。 …

世間では模範解答を公表しないのはおかしいといった論調もありますが、大学が試したいことを斟酌・熟慮した上で、原理・原則ではなく必要に応じて開示していくという方針の方が良いのではないかと思うのです。その上で間違いが起こらない、起こってもすぐに気づき修正できるチェック体制を構築する。

このような体制が各大学において早く整備され、受験生が安心して試験に臨める環境が整うことを願っています。

 

株式会社ブックスドリーム

代表取締役 井上聖也

投稿者プロフィール

ブックスドリーム 編集部
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